第33回 東部ニューギニア慰霊巡拝団派遣事業報告(2010年)
長野県ニューギニア会パプアニューギニア慰霊巡拝は、平成22年9月4日から8日まで5日間の日程で実施した。本田昌彦団長以下今回の訪問団員は総勢10人。長野県から浅沼紀幸・ゑい子夫妻(須坂市)小林信やさん(長野市)本田昌彦・祥子夫妻(青木村)大日方辰夫さん(小川村)西条政美さん(同)の7人、それに原口義座さん(立川市)富田英二さん(小樽市)富田ふみ江さん(富士見市)が参加した。
今回の慰霊訪問は、ニューギニア航空の増便に伴い4泊5日(機内1泊)の旅程で初めて実施した。首都のポートモレスビーから空路マダン、ウエワクに入り、平和公園慰霊の森において合同慰霊祭を催行。祭壇に向かい積年の思いを語りかけ、亡き父らを偲び、南十字星の下で散華した英霊の冥福を祈った。
ウエワク地区の戦跡を巡拝すると共に、セピック川の水上集落カンバランバへ向かい現地の小学校を親善訪問して、学用品などを贈り友好を深めた。
第33回 東部ニューギニア慰霊巡拝報告
本田 昌彦(団長)
はじめに
今回の慰霊巡拝は、ニューギニア航空の成田発着が週2便(水・土曜日)発着体制になったことに伴い4泊5日(機内1泊)の日程で実施しました。
慰霊団の構成は、長野県から7人、北海道、東京、埼玉から各1人ずつの10人と添乗員総勢11人と小規模。うち初参加者は6人で、4人は2回以上の経験者でした。
9月4日(土)
県内参加者は、ジャンボタクシーに乗り合わせ成田空港へ。県外参加者と空港で合流午後9時、ニューギニア航空PX-055便で一路ポートモレスビーへ。
9月5日(日)
午前4時45分、予定よりやや遅れてポトモレスビー国際空港に到着した。入国手続きを終えて空港を出ると、熱帯特有の生暖かい風が頬を打ち、この国独特の臭いを感じる。レストラン大黒にて朝食、両替とお土産のコーヒーの注文を取りまとめ、市内観光に出発。
公立植物園、展望台、水上生活者集落などをまわる。午後ウエワク移動のため空港へところが国内線機材のトラブルのため、空港内で待つこと3時間余。欠航が決まり、急遽モレスビーで一泊することとなる。とんだハプニングが発生したが、乗客は皆文句も言わずに冷静に対処していた。これがニューギニアの善さかと諦めてホテルへ向かう。
9月6日(月)
未明3時にホテルを出発。マダン経由でウエワクへ。午前8時ウエワク空港到着。川畑さんが笑顔で出迎えてくれる。朝食を済ませて、慰霊祭へ。
(1) ウエワク慰霊の森公園にて慰霊祭
日本より持ってきた供物、写真に日章旗、PNGの国旗を飾り祭壇を整える。黙祷に始まり、団長の慰霊の言葉、読経の流れる中焼香、西条さん(サルミで伯父戦没)が遺族代表で挨拶。「ふるさと」を斉唱し、先の大戦においてこの地において戦没した15万柱の御霊の安らかなれを祈りつつ式を終わる。
30年前に建立されたこの慰霊公園は、昨年改修工事が行われ、きれいに整備されていた。
(2) コイキン観音像前にて
長野県ニューギニア会によって30年前に建立された。優しいお姿の観音様の前で簡素な慰霊式を執り行う。今年は周辺の整備状況は良くなかったが、一行が訪れると早速草刈をしてくれた。いつも通りこの地を管理しているバカラー一族へプレゼントと謝礼を手渡す。
(3) ボイキン集落での慰霊式
ウエワクの西方約50キロ浅沼さんの父上が戦没された地。集落近くの小さな墓標前で慰霊式を行う。折りしも発生したスコールの中、密林の中に吸い込まれていった追悼のことばに、新たな涙を誘った。
(4) 洋展台・高射砲陣地跡
3ヶ所の慰霊式を済まして、旧師団司令部がおかれた洋展台へ。ここはウエワク湾を展望できる素晴らしい眺めの所。続いて近くの野戦高射砲陣地跡を巡る。密林の中にひっそりと数門の高射砲と戦車の残骸が残っており、往時を偲ばせる。
9月7日(火)
(1) セピック川と小学校の親善訪問
車2台に分乗して早朝ホテルを出発。アンゴラムに向かう途中、学校訪問を行う。この小学校はセント・ピターアイバブ・プライマリースクールで、日本から運んだサッカーボール、Tシャツ、学用品などを手渡した。国歌を大きな声で歌って歓迎してくれた。澄んだ瞳 ,はにかみながらも、人懐こい笑顔は忘れられない。お昼前にセピック川中流域にあるアンゴラムに到着。昼食後二艘のモーターボートに分乗して、上流の水上集落・カンバランバに向かう。
乾期のため水量は少ない。先の大戦において、アイタペ作戦遂行のためマダンからウエワク方面へ転進する将兵が、この大河と大湿地帯に阻まれ多くの犠牲者を出した今はゆったりとした水の流れに、往時を偲ぶよすがもない。
(2) PNG慰霊巡拝
カンバランバに着くと、大勢の村人が集まり歓迎を受けた。民族舞踊のシンシンを披露してもらう。ワニの精霊の面をつけた二つの踊りグループを中心に、老若男女が激しく踊り続ける様に、一同感動する。いつ終わるとも知れないシンシン踊りに別れを告げ、村人と一緒に全員で集合写真を撮る。夕食はウエワクホテルにてさよなら会を兼ねて盛会に行われた。
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9月8日(水)
早朝4時、ホテル出発。ウエワク空港からマダン経由でポートモレスビーへ。
(1) 日本大使館表敬訪問
本田団長ら3人が日本大使館を訪問、西山大使他二人の書記官と面会した。西山大使は、「ニューギニアの国内情勢は、鉱物資源の開発などにより経済的には上向いてきたものの、国民の所得水準は低迷しており、特に治安面での懸念が増大している」と発展途上国の置かれた厳しい状況を説明した。
この後、国会議事堂を訪れ、大黒レストランにて昼食後、空港へ。出国手続きにやや手間取ったが無事通過、午後8時無事成田に帰国した。
終わりに
今回初めて4泊5日(機内1泊)の日程で慰霊巡拝団が派遣された。当初から予想された通り、この日程の中での行動は限られてしまう。昨年までの8日間の旅程では参加できない方々にとっては、ニューギニアの一端でも見聞できれば良いーとの見方もあります。いづれにしても来年度の慰霊巡拝のスケジュールについては、再検討の必要があると思われる。
今回の慰霊巡拝の旅は、若干のトラブルがあったものの、全員無事に帰国され、慰霊巡拝所期の目的を達し、ニューギニアの豊かな自然と民族文化に触れ、友好親善が果たされました。ご支援いただいた皆様に心から御礼を申し上げ、ご報告と致します。