東部ニューギニア慰霊巡拝団派遣事業報告(2018年9月)
長野県ニューギニア会は、東部ニューギニア慰霊巡拝団の派遣を平成30年9月8日から15日まで8日間の日程で実施した。
訪問団員は総勢9名で、栃木県護国神社との共同事業として行った。
本会からは本田昌彦会長、山岸幸子さん(東京都)山岸靖志さん(軽井沢町)の3名。それに竹澤一重・キヨエさん夫妻(鹿沼市)神山修さん(函館市)神官の中山郁(皇學館大學教授)さん、稲貴夫(神社庁)さんの2名と片桐添乗員が参加した。
慰霊巡拝団は、成田よりニューギニア航空で首都・ポートモレスビーに入り、ラバウルに2日間滞在し、慰霊祭と戦跡めぐりを行った。ウエワクでは平和公園慰霊の森で、全ニューギニア戦没者合同慰霊祭を執り行うとともに、ゆかりの肉親が眠る各地を巡り慰霊式を行い、現地の小学校を訪問して学用品を贈り、友好親善に努めた。
第39回 東部ニューギニア慰霊巡拝報告
(平成30年9月)
派遣団長
長野県ニューギニア会長 本田 昌彦
■ はじめに
長野県ニューギニア会による現地慰霊巡拝は、昭和52年の第1回に始まり今年で39回を数えます。今回は総勢9名の少人数での訪問となりました。現地は乾季にもかかわらずニューギニア特有の暑さはなく、南半球でも異常気象の影響ではないかと感じました。慰霊祭は5か所で行い所期の目的を十分に果たすことができ、有意義な慰霊の旅でした。
以下、日程に従い概略ご報告いたします。
9月8日(土)成田―ポートモレスビー移動
成田空港午後9時35分、ニューギニア航空にてミクロネシアのチューク(トラック島)経由にてポートモレスビーへ。
9月9日(日) ラバウルへ移動
予定より早めに空港到着して、入国手続き後、国内線でホーキンス経由でラバウル空港へ昼頃到着。ホテルに移動後ブナカウ飛行場跡の戦跡視察。(旧海軍東飛行場で、昭和18年4月、山本司令長官が前線視察向かう途中、ブーゲンビル島上空で米軍機に撃墜され戦死した際、搭乗機が離陸した飛行場)
途中激しいスコールで車が立ち往生、地元のスーパーマーケットに立ち寄り夕刻ホテルに到着。
9月10日(月) ラバウルにて慰霊祭、戦跡めぐり
旧海軍司令部があった地下壕(ヤマモトバンカー)、東飛行場跡の戦闘機の残骸などを巡り、旧市内のホテルへ。午後、日本政府建立の「南太平洋戦没者の碑」にて慰霊祭。ここで日本遺族会の慰霊友好親善訪問団の皆さんと出会う。碑の周辺は清掃され、供花もたくさんあり盛大な慰霊祭が執り行われた。帰路、大発洞窟(上陸用舟艇の格納庫)ココボの戦争博物館に立ち寄った。1994年に大噴火を起こした火山(通称・花吹山)は、今は小康状態で、火山灰に埋もれた旧市街地は復旧が進み、活気が戻ったように感じられた。
9月11日(火) ラバウルからポーモレスビー経由ウエワクへ
早朝ホテルを出発。国内便にてモレスビー経由してウエワクに移動
午後3時、ウエワクの平和公園慰霊碑で「全ニューギニア戦没者合同慰霊祭」を執り行う。
中山神官による祝詞奏上に続き、長野県ニューギニア会を代表して本田と神山さんが追悼のことばを述べ、厳粛な中で、ニューギニア全土で15万人に及ぶ御霊の安らかなることをお祈りして「ふるさと」を献歌して式を閉じた。
9月12日(水) ウエワク周辺での慰霊式とコイキン観音へ
ウエワクの南東方面にあたるモロネ集落へ向かい、竹沢キヨエさんのお父様が亡くなった地で慰霊式。宮司による儀式の後キヨエさんが追悼の言葉をのべられた。正午過ぎ、トモロープライマリースクールを訪問、学用品を贈呈。午後3時過ぎからコイキン観音前で慰霊式を行い、全員で線香を手向け慰霊に感謝の誠を捧げる。管理人のバカランさんの親戚のジョセフさんにお礼とみやげを手渡し、今後の管理を依頼した。
夕刻、川畑さんの自宅を訪問、この春、91歳で逝去された静さんの墓碑に線香をあげご冥福をお祈りした。奥さん、3女のみはるさんも心から感謝していた。
9月13日(木) 八幡山での慰霊式とウエワク西方の戦跡へ
八幡山の麓の集落サワリンに立ち寄り、サポーター6人と共に山頂に近い陣地跡に向かう。ヤシの葉を敷き詰め祭壇を設け慰霊式を執り行う。
山岸幸子さんが、亡きお父さんへの思いの丈を涙ながらに語りかけ、その声が静寂な密林に響き一同感涙にむせんだ。また、故人の愛唱歌「椰子の実」を献歌した。
午後は、ボエキン、ブーツの陸軍飛行場跡や、地元の小学校を訪問した。
9月14日(金) ウエワークからポートモレスビーへ在PNG大使館訪問
洋展台、ウォーム岬、安部の岬、松の岬など旧日本軍の戦跡を巡り、国内線でポートモレスビーへ。午後4時から移転新築した在PNG日本大使館を表敬訪問。中嶋大使不在のため、島崎一等書記官が対応された。ニューギニア会発行の『椰子の記』と会報「椰子の樹」を贈呈。
夕刻、大黒レストランにて大使館主催の夕食会。縄田参事官、上村二等書記官が対応され、和やかな楽しい一時を過ごした。
9月15日(土) ポートモレスビーから帰国へ
午後1時35分 ニューギニア航空のチューク経由便で帰国の途へ、午後9時成田空港着。
■ おわりに
今回の慰霊巡拝は久しぶりにニューブリテン島のラバウルを訪れた。
ニューギニア航空の直行便がチューク(元・トラック島)経由となり、片道2時間余時間がかかったが、国内便の接続も問題なく予定した行程を消化して全員無事帰国できました。参加された方々のご協力に感謝いたします。
今回の旅の中で、トピックスを以下に記します。
【1】 南半球も異常気象か
9月は乾季にもかかわらず雨の日が続き、日中の気温もさほど上がらずニューギニア特有の暑さは感じられず、極めて過ごしやすい日々でした。十数回訪れた中で初めて体験したが、今年限りのものか、今後が心配されます。
【2】 PNGの独立記念日(9月16日)を前にして、各地で祝賀ムードが高まっていました。ウエワクでも13日にオニール首相が訪問するということで、沿道は揃いのTシャツと国旗を手にした生徒たちで埋め尽くされ、サッカー場では大勢の人たちが集まりイベントが行われるなど、独立記念日を祝い、率直に喜んでいる姿が印象的でした。
【3】 11月のAPECの開催を控え道路の整備、ホテルやショッピングセンターなどの建設ラッシュが続いており、日本のバブル期に似た活気が満ちあふれていた。経済の急速な発展期にみられる‘’ ひずみ‘’ も出てきている様子で、政府の財政赤字は膨らみ、所得格差が顕著になってきているとのことでした。
現地慰霊巡拝は参加者が年々減少しつつあり、先行きが懸念されます。
中山郁皇學館大學教授によれば、「慰霊巡拝に行かないことは、死者を忘却することになる」とのことです。これは絶対に避けなければならないと思います。
当会の現地慰霊巡拝も来年で40回の節目の年となります。
初めての方、再度訪れたい方を可能な限り勧誘して多くのメンバーで現地慰霊巡拝の旅を継続したいと考えています。
会員の皆様はもとより「手つかずの大自然と人が共生する国」ニューギニア島に、いろんな意味で関心をお持ちの全国の方々のご参加を心から歓迎いたします。